まなびのまとめ

読んだ本、考えたことのアウトプットの場として

【読書】失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織 著者:マシュー・サイドさん

https://www.amazon.co.jp/dp/B01MU364ID/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

 

失敗から学ばない組織(本書では医療現場を例)、失敗から学ぶ組織(航空業界)、失敗を受け入れない人、受け入れて成長・改善するために活用する人を様々な実例を挙げて分かりやすく説明してくれている。

 

筆者は「クローズド・ループ」、「オープン・ループ」との言葉を用い、失敗が適切に処理され、将来に活かされるためにオープン・ループの組織であるべきだと主張している。医療現場はミスに対して「偶発的な事故」、「不測の事態」と捉えがちだが、航空業界は、失敗を検証する仕組みづくりができている。

 

「人の失敗から学びましょう。自分で全部経験するには、人生は短すぎます」 p.439 

 米第32代大統領夫人、エレノア・ルーズベルとさんの言葉。

 

何か失敗したときに、「この失敗を調査するために時間を費やす価値はあるのだろうか?」と疑問を持つのは大きな間違いだ。時間を費やさなかったせいで失うものは大きい。失敗を見過ごせば、学習も更新もできないのだから。p.554 

 勤め先のプロジェクトがとん挫したことがあったが、果たしてその失敗が適切に活かされているかはまだ分からない。ただ、失敗と向き合うとしている姿勢や何かを変えていこうとする動きは感じ取れる。

 

適切なフィードバックの大切さ

筆者は暗闇でゴルフの練習をいくら行っても決して上達することはないと言っている。それは、打ったボールがどこに飛んだか分からないので改善する余地がないとのこと。心理療法士の能力が向上しづらいのも、治療の長期的な影響に関するフィードバックがないからだ。人生は学びの連続であるが、トライ&エラーを素早く行い、フィードバックを適切に受ける環境に身を置く、あるいは仕組みづくりをすることの大切さを教えてもらえる。

なぜ人は失敗から学ぶことは困難なのか

「認知的不協和」:自分の信念と事実が矛盾している状態

フェスティンガーが提唱した概念

・カルト集団が教祖の予言が失敗してもその解釈を変える

・参加する討論会が退屈であったとしてもその会に参加するため、大変な努力をすると討論会を過大評価する

イデオロギーが科学を殺す

トロフィム・ルセインコ:ソ連生物学者

メンデルの法則には根拠となるデータがあったが、ルセインコはスターリンにメンデルの学説を非合法化してもらった。そのため、ソ連では大勢の遺伝学者が処刑や強制収容所行にされた。

ルセインコは高密度の田植えを提唱。

「同種の植物は互いの成長を阻害しない」という持論が、マルクス毛沢東の哲学と沿う理論であった。

毛沢東はルセインコの学説に基づく農業開発を推し進めたが、この学説は検証が行われていなかったため、作物はうまく育たず土が痩せてしまい、推定で2000~4300万人もの人が飢饉により死亡した。

 

間違えることの重要性

 ユニリーバーのノズル改良の話。改良がうまく進まなかったが生物者チームによる改良が一番成果を上げた。

方法:ノズルの複製を作り、わずかな変更を加え、どのような違いが出るかテスト

    449回の失敗を経て、ノズルのデザインを作った。

 

 試行錯誤をすることの大切さ。トライ&エラーを何度も素早く回す。

ランダム化比較試験(RCT)による検証

ケニアのある地域で教科書を無料配布するプログラムがあったが、無料配布には効果がなく、むしろ駆虫薬の配布に効果があった。

Googleで広告のクリック率を高めるために背景の色を決める時も、RCTを利用し、利用者をランダムに背景が異なるページに飛ばし検証を行った。

 

成長する人の考え方

成長型マインドセット:失敗を自分の力を伸ばす上で欠かせないもの

固定型マインドセット:失敗を「自分に才能がない証拠」として受け止める

 

グリッドスコア:失敗しても根気強く「やりぬく力」のスコア

 

自分の考えや行動が間違っていると指摘されるほどありがたいものはない。そのおかげで、間違いが大きければ大きいほど、大きな進歩を遂げられるのだから。批判を歓迎し、それに対して行動を起こす者は、友情よりもそうした指摘を尊ぶと言っていい。己の地位に固執して批判を拒絶する者に成長は訪れない p.3831

人から指摘されると反射的にプライドが許さず受け入れられないときもあるかもしれない。しかし、指摘は自分を向上する機会だと捉え、受け入れることが大切。

 

事前検死

プロジェクトを実施する前にプロジェクトが失敗した状況を想定し、プロジェクトがうまくいかなかった理由を挙げていく。

 

これは面白い手法だと思うし、小さなチームでもできそうなことだと思う。